休載P4A 【 My happy definition】
第11章 気に食わないこと(6月入る前の話)
「くそっ、せっかく俺がわざわざ入れてやったのに」
―――
ルナちゃんの様子を見てきてほしいと、堂島さんに頼まれ堂島家へと足を運んだ。
玄関のチャイムを鳴らせばすると、酷くおびえた状態のルナちゃんが出てきた。さすがと言っていいのか、堂島さんの感は当たっていた。
奴がここにいる。
この夜桜の起こした事件は嫌でも覚えている。当時高校生だった僕は、何気なく見ていた朝のニュース番組で取り上げられて、自身の妻を殺し近所の人たちにも怪我をさせたとかで話題となっていた。
しかも精神異常だとかでそういった関係の施設やら病院に入ったと。
そして彼女も話題になっていた。可哀そうな一人残された娘と。未成年ということもあり、すぐに彼女の情報は出なくなったがたびたび近所のインタビューに彼女をにおわすようなコメントもあった。
気の毒だな、と思った。こんなくだらない大人に振り回されて、少しくらい報われてもいいんじゃないかって。
まさかその彼女、ルナちゃんに会うなんて思ってもいなかった。
稲羽市に移動になって堂島さんと知り合い行動するようになり、なんとなくこんな事件がここであったんだよな、と何気なく質問するとまさかルナちゃんが堂島さんの家に養子として向かい入れられてるなんて想像もしてなかった。
初めて堂島さん家に呼ばれ彼女に会った。全然過去のことなんてなかったかのように、ニコニコ笑っていて、期待外れだった。
報われればいいと思っていた半面、その子もこんな世の中に嫌気がさしていればいい、と思う自分がいた。
でも違った。眩しいくらいの存在で、堂島さんにとって菜々子ちゃんと同じく愛する娘。夜も遅く菜々子ちゃんは眠っていたので、堂島さんとルナちゃんと3人で座り、食事をした。居心地が悪く、早く帰りたかった。
けれど、彼女がちゃちゃっと作ってくれたご飯はおいしかった。
そんな感じに僕は彼女に餌付けされて、なんだか憎めない存在になっていた。
ずっとこのまま堂島ルナは幸せになっててほしいと思った。
ひんやりとした彼女の手が僕の意識を現実に戻した。
どうして彼女にこんな顔をさせるのか。
ムカつく