休載P4A 【 My happy definition】
第7章 (私の話)
数分か、数十分経ってしまったのか、自室の扉の向こうから足立さんの入るよ、と声が聞こえた。
「おまたせ」
「どう、でしたか?」
「もう大丈夫!おとなしくあいつは帰っていったよ」
「帰った?」
どこへ帰ったのだろうか。施設?それともどこかで部屋を借りているのだろうか。
「あー、ほら、施設で仕事とか見つけてくれてるから、そこで寮とかに住んでるんじゃないかな」
「そっか、よかった」
「そうそう、ルナちゃんは笑顔の方がいいよ、もう心配しないで僕が堂島さんにもあいつがいなくなったのも伝えるし、このまま休んでて」
「お願いします。本当に足立さんが来てくれてよかった」
座っている私に目線が合うよう屈んでくれる足立さん。彼も先ほどまでの緊張感が薄れ、笑顔が戻っている。
「じゃ、僕はもう警察署に戻るね。何かあったら、僕でも堂島さんにでもすぐ連絡頂戴ね」
「はい、何から何までありがとうございます」
もう菜々子がそろそろ帰って来る時間だ。もうあの人が帰ったと言われても、己の目で見たわけではないので、恐る恐ると居間へと降りた。しんとした、いつも通りの居間だった。散らかった様子もなく、本当に話をしただけみたい。
「お姉ちゃんただいま!大丈夫?元気になった?」
「お帰り、心配かけちゃったよね、もう大丈夫。
なんでもないよ」
夕方には悠くんも帰ってきた。彼もとても心配していてくれたようだが、菜々子とテレビを見て笑っていた私を見て安心してくれた。
『もしもし、ルナか?』
家の固定電話にでると、お父さんからだった。お父さんにも心配させていたんだろう。昨晩から電話にも出れなかった。
「お父さん、私、ルナだよ。電話もらってたのにごめんなさい」
『全くだ、どれだけ心配したか・・・
足立から聞いた、あの男が帰ったんだってな』
「うん、だから、もう何ともないよ、大丈夫」
『わかった。あと悪いんだが、今日から少し帰れなくなりそうだ、すこし事件の内容整理に手間取っててな』
「無理しないで、菜々子のことも大丈夫だからね」
お父さんに会いたい気持ちも強かったが、仕事は仕方がない。
受話器を置くと、居間の窓からはパラパラと窓がたたかれ雨が降っているようだった。