休載P4A 【 My happy definition】
第7章 (私の話)
「あ、あだちさん?」
「大丈夫」
気が付くと、ぎゅっと少し息苦しく、なんだかタバコ臭く感じた。頭をポンポンと、優しく包み込むように撫でられる。
「ルナちゃん、とりあえず中に入ろうね。僕も一緒にいるから。
だけど、少し夜桜と話したいから、自分の部屋で待っててくれる?」
一緒にいてくれるだけでどれだけ心強いか、こくりと頷き足立さんの表情をうかがうと、彼は玄関の方を、探るように、睨みつけるようにその先を見つめていた。
「僕の後ろにいて、様子見てルナちゃんの肩たたくから、そしたら部屋にね?僕が話してみるから」
「はい、ありがとうございます」
足立さんのスーツに力を込めて握りしめ、くっついた。自分の家の中なのにどうしてこんなにも緊張し、恐怖しなければならないのか。玄関を閉めるときには、なんだか空も怪しく陰っていた。
玄関から入ってすぐの廊下には父はいなかった。どこへいったのか。靴を脱ぎ、足立さんとともに居間のほうへ近づくとぶつぶつと声が聞こえる。
「ルナ、ルナ、一緒に、一緒にやり直そう
今度は失敗しないから・・」
失敗、父にとってあの時の出来事は、ただの、やり直せるような失敗だったのか。だんだんと冷静さを取り戻し、周りの様子が伺えれるようになってきた。
ぽん、肩に足立さんの手が触れた。今度はきちんと目が合った。ごくんと唾をのみ、私は静かに階段を上り自室へと向かった。
足立さん、ありがとう。
きっと彼がどうしてここへ来たのか、何が目的なのか問い詰めてくれるはず。刑事である彼がとても頼もしい。
あの時のように部屋の隅で小さく座っていることしか、今も昔も私にはそれしかできなかった。