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御伽アンダンテ【HQ】【裏】

第15章 遠い思い出に


長い手紙の中で、彼女の遺言とも言える部分はしっかりと守った。
灰になってもどうか一部は持っていてほしいという旨。
そして自分の家の墓には入れず、綺麗な海に流してほしいと。
卒業旅行を計画していたが、それを蹴って、と二人旅に行くことになった。


彼女の実家と、そしてあの母親には一応連絡はしたが、好きにしろという言葉だけだった。
孤独の彼女は、最期まで俺しかいなかった。
俺も孤独を埋めてあげられたのかはわからない。
もしかしたら、あの日から怒っていたかもしれない。
それでも、手紙に書いてあった沢山の
『ありがとうございました』
の丁寧な文字を見て、少なからず寄り添えた安心感があった。
それは、一生の宝だろう。

遠浅の珊瑚礁に、そっと細かい灰をばらまいた。
周りは真っ青の海で、シャラシャラと珊瑚同士のぶつかる音がする。
耳に心地いいがどこか異世界のようにも思えた。
「ゆっくり眠ってくれ」

お伽噺のような、そんなものを連想させる、1年の恋が終わった。
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