第15章 遠い思い出に
もしまだ私のことを好きでいるなら、どうか私の骨の一部は持っていて下さい。
最期までとは言いません。
牛島くんの、次の恋人が見つかるまでの間でもかまいません。
少しでも一緒にいて欲しい。
わがままでごめんなさい。
あと、私の実家は、多分私のお葬式も何もしてくれないと思います。
私もそれでいいと思ってる。
残った骨は、一緒に行ってみたかった綺麗な海に流して欲しい。
これも、わがままだね、ごめんなさい。
私はきっと、牛島くんがいなかったら、独りでいなくなってました。
誰にも気付かれず、誰にも相手にされず、誰にも影響も与えず、誰の人生も揺るがすことなく、ただ一人、人口を減らしていただけだった。
もし牛島くんの人生に、少しでも影響を与えることが出来たのなら、幸せです。
そして私の知らないたくさんの世界を教えてくれて、本当にありがとうございます。
いろんな人がいて、いろんなにおいがあって、いろんな食べ物があって、楽しいこともつらいことも山ほどあって。
人を好きになる気持ちが、こんなにいろんなことを満たしてくれて。
まわりは、色も香りも音も溢れてるって。
なんにも知らなかったから。
牛島くん、ありがとうございました。
どうか焦らないで、
歩くようなはやさで、
私とのことを遠い思い出にしてください。