第14章 刻
もうすぐ受験が控えている。
初詣は、部員たちと学業成就のお守りを買った。
彼女には、何も買えなかった。
迷惑だろうと、怒らせてしまうだろうと、そう思うとなかなか見繕えなかった。
他の奴らに、別れたのか?と散々色々と質問されたが、無視した。
そういえば、怖くて会ってもいない。
怖くて、というより、不安。
またあの冷たい目をされるのか。
またあの冷たい言葉を掛けられるのか。
そう思うと、一歩また彼女に距離を取ってしまう。
誘われた昼飯を断り、やはり会いたいと思った。
急いでの病室に向かう。
明るく白い光が射し込んでいる。
彼女は一瞬俺の顔を見ると、またすぐ天井を見上げた。
「……」
「…」
は、弱々しく手を握り、パイプ椅子に座るように促してくる。
もう、怒ってはいないようだ。
「久し振りだな」
「……」
力弱く手は握るものの、彼女は声を出さなかった。
何か話そうと思ったが、何も言えなかった。
いつもはから話を振ってくれていた。
今日は何した、どこ行った、何を食べたか、いつもいろいろ質問された。
部員たちとは違い、素直に答えることが出来る。
いかにに助けられていたかと思うと、情けなくなる。
「牛島くん来てたの?」
いつもの看護士から声を掛けられた。
「はい…」
「ちゃん、朝お風呂の日でよかったねえ」
「……」
は柔らかく微笑み、頷いた。