第7章 戯れの花
「そういう感覚なのか」
「うん…楽しいよ、とても。
考えてたこととわからないところの隙間にたまに、かちって、当てはまる物があるの。
それが見つかると、スッキリするというか……」
「難しいことを言うんだな」
「例えば、あ、漢字なんかわかりやすいかな。
成り立ちとか、この形になった意味とか…。
でもそれは、国語じゃなくて、歴史の授業からじゃないとわからないことが多くて…こんな風習があって、その時に使われていた物の形から取ったとか…。
そういうのわかると、嬉しいよね」
「…少しわかった」
「うん、よかった…!」
嬉しそうに笑い、また視線を手元に落とした。
「そういえば、あの親でも学費はくれるんだな」
失言した、との顔を見たが、気にしている様子はなかった。
「うん、白鳥沢は、特待生で入ると教材費と少ししか掛からないから…。
でも、お父さんには、名前が少しでもわかるところにって言われて…。
普通の公立だと困るって。
世間体とお金を取ったら、ここになった、という、私の考えなんて、1ミリもないの…」
「でも、会えたな」
「…え?」
「と、会えた」
「…っ」
一瞬にして白い肌が色付く。
美術品のような顔が照れたように歪むのはなんとも美しい。
何年も愛でていた人形が生きていたかのような感動がある。
しばらく声もきちんと聞けていなかった。
せっかく同じ屋根の下にいるのに。
だから、もっと話していたいのに。
それには反して言葉の出口を己の唇で覆ってしまっていた。
逃げ惑う舌を捕まえたくて噛みつき直す。
「…っ!はぁ…っ」