第7章 戯れの花
「貴方にもそういう人が出来てよかった」
意気込んで説得しに行ったにも関わらず、とてもあっさり快諾されて拍子抜けした午後8時。
の部屋を用意してもらった。
あと運ぶものはないか聞いたが、家具はもう使えなさそうなので棄てる決心をつけたそうだ。
新しい環境に緊張してか、2日ばかりほとんど食べれず、少しツラそうだった。
3日にしてようやっと、俺の家族の一員として食事を取ってくれた。
雨が続いてしまったせいか、は体調を崩し、1週間近く学校を休み、その土曜の夜、久々に俺の部屋に彼女は来た。
「ご、ごめんね…っ!
ノート、写していい…?」
しどろもどろに怖がりながらは入ってきた。
「ああ」
普段は畳んでいる小さなテーブルを組み立てて出し、ここ1週間の授業を振り替える。
「牛島くん…マメだよね…」
「テストで点を落とすと、部活に出られなくなる」
「……そっか、文武両道って、すごいね…」
仕方なくやっている、という所は大きいが、いずれもっと必要となることは最低限こなしておいた方が楽だというのは、その昔に学んだ。
バレーをするために環境が整った学校に入るには、それなりの努力が必要であった。
そして、継続するにも。
学生の本分を守らなくてはならないというのは、些か負担ではあったが、続けるためには仕方がない。
そう思うことにしている。
「は勉強が好きなんだな」
本人からノートを見に来るというのは、それなりに意欲がないと出来ないことだ。
さらさらと教科書と照らし合わせながらやっているのを伺うと、趣味のレベルだと思われる。
そこに惰性はなかった。
「そうかも……パズルを解いている感じに似ているかな…?」