第1章 俺の執事
蓮side
家に帰り着いても郁翔とは会話をする事がなかった。
「蓮様……先程は申し訳ございません。どうか気を悪くなさらないでください。」
郁翔が少し困った表情で頭を下げてきた。
それでも俺はそっぽを向いていた。
普段、俺に向かって本気で謝ったことのない郁翔が本当に心から謝っている。
新鮮だ。
「どうしたら許してくれますか?」
……そうだ……いいこと思いついた……
「そうだな……キスしてくれたら許す。」
「……え?冗談ですよね?」
「本気だけど。」
……あれ、何言ってんだ?俺。
怒りと嫉妬心からそんな事を言ってしまった。
て、訂正しないと……
『冗談冗談!』っと誤魔化そうと思って郁翔の方を振り向くとそこには郁翔の顔が近くにあった。
俺の座っている椅子の背に両手を着き、屈んでいいる。
やばい……
やっぱかっこいいな、コイツ。
そう思ってうっとりとしてしまっていた。
気がつくと唇に何か柔らかい物が触れていた。
郁翔の唇……
え……
マジでキスしてる。
「……これで許してくれるんですよね?」
「……お、おぉ……////」
あまりにも突然すぎて思考が追いつかない。
今のは『普通、口じゃなくて頬とか額だろ!?』って怒るところなんだと思う。
ファーストキスが郁翔と……好きな奴と……
凄く嬉しかった。
でも、顔に出してしまえば良くない。
「お、お腹……空いた……何か作れ……////」
「……顔が真っ赤ですよ?……もしかして初めてでした?」
「だったらなんだよ!?どうせお前は何回もした事あるんだろ?!////」
何でコイツは顔色1つ変えずにキスなんか出来るんだよ……
「速く何か作れ……////」
「はいはい。分かりました。」
そう言って郁翔が部屋のドアノブに手をかけた。
「あっ……それから……」
出て行くかと思ったら、足を止めてこっちを振り向いた。
「私も初めてですよ?」
口元に人差し指を当てウィンクしながら少し照れた様にはにかんだ。
そのまま郁翔は部屋を出て行ってしまった。
初めてって……
アイツもファーストキス……って事か?
「うわぁぁぁぁ!!////」
急にとんでもない恥ずかしさと嬉しさが込み上げてきて、ベッドの上で転がった。
郁翔のファーストキスは……俺?!