第5章 どうにでもなれ
郁翔side
久しぶりに西園寺家に来た。
一通の手紙が届いたからだ。
『大事な坊っちゃんを返して欲しければ、身代金3億を用意しろ。櫻木郁翔は例の場所に金を持ってこい。』
その手紙は西園寺家にも届いていたようだ。
「失礼します!」
「郁翔君!これはどういう事だ!」
西園寺様が手紙を持って怒鳴っている。
普段、あまり怒る人ではない。
「申し訳ございません。」
「謝罪などどうでもいい!説明してくれ!息子はどうなるんだ!」
「・・・はい、全てお話します。」
俺の家は元々貧乏で親は多額の借金を抱えていた。
両親とも一生懸命働いていたが、祖父がさらに借金を残したまま亡くなってしまい、倍の借金を背負うことになった。
なんとかして返そうと両親はさらに仕事を増やしたが、過労で倒れてしまった。
借金の取り立ても毎日のように家に上がり込んできた。
両親は耐えきれなくなり、薬を飲んで一家心中しようとした。
けど、俺だけが何故か生き残った。
母親が俺だけは生きてほしいと偽物を飲ませていた。
まだ幼かった俺は孤児院に行くだろうと考えていたのだろう。
だが、俺を見つけたのは警察よりも先に取り立てに来た連中だった。
その日から俺は名前を変え、借金を返すためにそいつらの仲間になった。
学校には行かせてくれたが、その分、働かされた。
地獄のような毎日だった。
それも何年も続き、ある話が入ってきた。
『次の仕事を最後にしてやる。』
やっと、逃れられる。
そう思った。
俺は即、その仕事を受け入れた。
仕事の内容は・・・
西園寺家に潜り込み、弱みを探る事だった。
『私の人生をあなたに捧げます』
そう言ってこの家に入った。
息子の側にいるのが1番良いと考えた。
俺の読み通り、簡単に受け入れてくれた。