第1章 俺の執事
蓮side
学校が終わり、校庭や体育館は部活動生の声が響いていた。
俺は帰宅部のため、すぐに校舎から出て門に向かった。
門の前には郁翔の車があった。
いつもなら車の前で待っていてくれているが、今日はいなかった。
あいつ……どこに行った?
てか、主人待たせるとか……何考えてんだよ。
そう思いながら車の近くで待っていようと近づくと、女子の騒ぐ声が聞こえてきた。
なんだ?
「名前なんて言うんですか?」
「誰か待ってるんですか?あ!彼女さんとか?!」
「いえ。違います。」
「じゃあ、弟とか妹さん?」
「それも違います。」
女子に囲まれているのは郁翔だった。
何やってんだアイツ。
ほとんど見せない笑顔を出しながら、女子に答えている。
なにヘラヘラしてんだ。
柄にもなくニコニコしやがって。
ただ、その笑顔は本物には思えなかった。
……イライラしてきた……
そんなの早く抜け出して戻ってこいよ。
俺……嫉妬してる……
恋人な訳でもねぇのに……
「あ、蓮様。」
やっと俺に気づき、こっちに向かってくる。
「申し訳ございません。待たせてしまって。」
「……ふん……早く帰るぞ。」
「はい。」
俺は黙って鞄を郁翔に渡し、車に乗りこんだ。
あー!くっそ!
イライラする!!
車の中でイライラを抑えきれずにいた。
確かに郁翔は顔が良いからモテるのも無理ない。
何とかして郁翔を俺の物に出来ないものか。
執事だから俺の物ではあるが……
そんな意味じゃない……
まぁ……そんな事は許されない事だが。
こんななら郁翔を執事にしなきゃよかった。
階級差さえなければ……
何今更後悔してんだか……