第4章 あくまで執事として
郁翔side
蓮様・・・命令を無視した事、お許しください。
俺は再び、部屋に戻ってきて扉の前に立つ。
そして、ノック無しに部屋に入る。
「失礼します!」
「っ!?////」
中に入ると、蓮様は犬塚様に抱かれている状態だった。
「また君かい・・・そんなに命令が聞けないのか?」
「郁翔・・・なんで・・・」
「蓮様、申し訳ございません。私は貴方を守る事が仕事ですので。」
「・・・本当にそれだけ?」
犬塚様が俺の言葉に入ってきた。
「・・・それだけです。」
「ふーん・・・どうだろうね。」
「犬塚さん・・・?どういう事ですか?」
「うーん。例えば・・・」
犬塚様が蓮様に馬乗りになりキスをした。
それも深く・・・
「やめろ・・・蓮様に気安く触れるな・・・」
思わず本性が出た。
「いく・・・と?」
「本当は好きなんじゃないの?蓮君の事。」
犬塚がニヤニヤと笑みを浮かべながら聞いてくる。
「そんな事は今関係ありません。」
「関係無いことないよ。というか、執事だよ?君は。そんな立場で蓮君の事を愛していい訳がない。・・・執事失格だな。やめろ。」
会話を聞くにつれ、蓮様の表情が困っていくのがわかった。
犬塚の言うことは全て正しい。
間違っているのは俺だ。
「違う・・・よな?郁翔・・・別に恋愛感情があるわけじゃないよな?・・・あくまで執事として俺を守って・・・」
『あくまで執事として』・・・
そうだ。
俺は執事だ。
蓮様は俺のことなんてそんな風に思っているわけが無い。
むしろ、俺みたいな奴はゴメンだと思っているはずだ。
蓮様と俺とじゃ釣り合わない。
まだ犬塚との方が釣り合うだろう。
「・・・そうです。私は執事としての務めをしているだけです。犬塚様、蓮様から今すぐ離れてください。でないと西園寺様に報告しなければならない事になります。そうなると、貴方にとってはまずいのではないでしょうか?」
「・・・ふん、誰が君の言うことを聞くのかな?」
「自分で言うのもなんですが、西園寺様は私の事を深く信頼されております。貴方よりも。」
「・・・あーあ、やめたやめた。冷めたよ。また今度ね、蓮君。」
そう言って犬塚は部屋を出ていった。