第4章 あくまで執事として
郁翔side
蓮様の為にお茶を持ち、部屋に向かう。
ドアをノックする。
「蓮様。お茶をお持ちしました。」
「〜っ!」
「蓮様?どうなさいました?」
中の様子がおかしい。
「入ります・・・」
扉を開けると、中には犬塚様とスーツがはだけた蓮様がベッドの上にいた。
蓮様はベッドの上に慌てて座ったような形になっている。
「何を・・・」
「っ・・・何でも・・・ない・・・////」
蓮様は目が潤んでいて何かを訴えかけているようにも見えた。
「・・・犬塚様、いらっしゃったのですね。」
「うん。君こそ何か用かな?」
「お茶をお持ちしました。」
「そういう事か。そこに置いといて。後は僕が・・・」
「いいえ。犬塚様は会場の方にお戻りください。私が蓮様を看ております。」
「いや、君は出ていってくれ。蓮君と久しぶりに話でもしたいんだ。」
「しかし、蓮様にお仕えするのが私の務めでございますので。」
何とかして、犬塚様を部屋から出そうと試みる。
蓮様のあの顔は助けを求めている顔だ。
それにあのスーツのはだけ方・・・
「おかしいな・・・君はとても優秀な執事だと聞いたんだが・・・言うことひとつも聞けないのか。」
「私の主人は蓮様ですので。」
「そうだろうけど、君は自分の立場を分かっていないようだね。君は身分が僕より下なんだよ。それに、社長からかなりの信頼を持たれている。君なんて僕が社長に言えば首に出来るんだよ。」
犬塚様が蓮様の方を横目で見た。
蓮様の顔が真っ青になる。
「郁翔君・・・いうこと聞いてくれないかな?蓮君が悲しむようなことはしたくないんだ。」
聞くわけにはいかない。
「申し訳ございませんが・・・」
「郁翔、出ていってくれ。」
蓮様が口を開いた。
「今、何と・・・?」
「2人にしてくれ。頼む。」
「主人の命令だ。郁翔君。」
その言葉は本意ではないのはわかった。
ただ、俺は蓮様の言うことは絶対。
それが決まりだ。
「・・・承知しました。」
従うしかない。
俺は身分が下なのだから。