第4章 あくまで執事として
郁翔side
やっぱり蓮様が変だ。
怯えている。
さっき袖を掴まれた時、震えてるのがわかった。
昔、犬塚様と何かあったとか。
けど、深追いするのは良くない。
俺は執事。
関係のない事に首を突っ込んではいけない。
特に貴族間の事に易々と入り込むのは1番ダメだ。
蓮様の為に飲み物を注ぎながら考える。
大丈夫。
俺は蓮様を守るのが務め。
「蓮様。飲み物をお持ちしました。」
「あ、ありがと。」
顔色が悪い。
「大丈夫ですか?」
「う、うん。」
「蓮君?本当に大丈夫?」
犬塚様が蓮様の肩に触れる。
「はい・・・すみません。心配かけて。」
・・・やめろ・・・
触るな・・・
「少し、部屋で休んできなよ。用意してあるから。」
「はい。じゃあ、遠慮なく。」
「社長。蓮君が体調悪いようで・・・少し席を開けます。部屋に連れていきますね。」
「そうか。わかった。蓮を頼むよ。」
「任せてください。じゃあ、蓮君。行こうか。」
蓮様の肩を支えて犬塚様が移動する。
その光景を見逃すことができなかった。
蓮様の肩から犬塚様の手を払い除ける。
「犬塚様。ここは私、執事の仕事です。お任せ下さい。」
「郁翔・・・」
「・・・それもそうだね。じゃあ、頼んだよ。郁翔君。」
「はい。蓮様、行きましょう。」
「うん。」
嫌な予感がした。
犬塚様のあの手の触れ方・・・
何かを感じ取ってしまった。
近づけてはいけない。
触らせてはいけない。
いや・・・もしかしたら思い過ごしなのかもしれない。
そうじゃなくて、近づけたくない。
触らせたくないのかも。
「蓮様。着きましたよ。」
「ありがと・・・」
「ネクタイ、外しましょう。少しは楽になります。」
「うん。」
守らなければ。
俺の愛しい主人は誰にも触れさせない。