第1章 帰郷
「そうだ!ちょっと待っててね」
ヒナタは涙を拭うと、急いで部屋に戻って自分の机の引き出しを開けた。
大事にしまっておいた鍵を取り出し、リエの元へ戻る。
「…これ!シカマルくんから受け取ったよ。ずっと大事に預かってたの。リエちゃんに返すね」
それは、リエが里を出る日に、ヒナタに渡してほしいと見送りに来てくれたシカマルに託した、リエの自宅の鍵だった。
帰ってきたら一番にヒナタに会いに行く、その約束の証。
この鍵を渡す日を心待ちにして、ヒナタは日々を過ごしていた。
鍵を受け取ると、リエはまた笑った。
「ありがとうヒナタ。修行中に邪魔してごめんね。明日、時間ある?お茶でも出来たら嬉しいな」
「明日は何もないけど…今からでも大丈夫だよ?」
「本当はそうしたいところなんだけど、綱手様に帰ったこと報告しなきゃならないんだ。折角なら、時間あるときにゆっくりしたいじゃない?やること全部済ませてからの方が気兼ねなく話せるから」
「そ、そうだね。リエちゃん疲れてるだろうし、今日はゆっくり休んでね」
「ありがとう。ネジさんにも宜しく伝えてね」
じゃぁ明日ね、と手を振りながら笑い、長くなった髪を揺らしながら去っていくリエの後姿を見送りながら、ヒナタの瞳にまた涙が浮かんだ。
夢でも幻でもない。
リエが、今ここにいる。
木ノ葉の里に帰って来てくれた。
そして、本当に一番最初に自分に会いに来てくれた。
そのことが、こんなにも嬉しくてたまらない。