第1章 帰郷
名家の一族、宗家の邸宅。
その庭で、彼女は修行をしていた。
久しぶりに見る彼女もリエと同じく、昔は短かった髪を伸ばしていて
綺麗に真っ直ぐ伸びた髪は、彼女の誠実さをそのまま表したようにも見えた。
「ヒナタ」
修行がひと段落ついたのか、タオルで汗を拭う彼女に、リエはそっと声をかける。
その呼びかけに振り向いた日向ヒナタは、リエの姿を見て大きい目をさらに大きくさせた。
「ただいま」
笑顔でそう言葉をかけると、ヒナタの目にみるみる涙がたまっていく。
持っていたタオルを落とし、ヒナタはリエに駆け寄りその身体を抱きしめた。
「リエちゃん…リエちゃん!!」
「ごめんねヒナタ。相談も何もしないで、勝手に出て行ったりして。たくさん心配かけたよね。本当にごめんなさい。でももう、私は大丈夫だから」
そう言うリエの顔からは確かに、あのときのような悲愴感は感じられなかった。
ヒナタが大好きな笑顔で、今ここにいる。
「うん……うん。おかえりなさい、リエちゃん!」
涙を拭いながら、ヒナタも笑顔でそう返した。