第1章 帰郷
買い出しから帰って来たザラメとキナコ、そしてミツとのしばしの談笑の後、リエは甘風を後にし、木ノ葉の里へと歩みを進めた。
そっと、リュックから額当てを取り出す。
自分が木ノ葉の忍であるという証。
里を出てから一度も付けることのなかったそれを以前と同じく首に巻くと、初めて身に付けたときのような高揚感が湧いた。
あのときとは、状況がガラリと変わってしまった。
けれど、この額当てはずっと自分の誇りだ。
里の出入り口“あんの門”。
里を出るときここでカカシが見送ってくれたことを思い出し、自然と口元に笑みが浮かぶ。
里の正門を抜けると、一番に目に入ったのは火影岩だ。
自分が里を出たときにはなかった五代目の顔岩が出来ていた。
それを見ただけで、月日の流れを実感する。
門番はリエのことを知らなかったようだが、事前に五代目火影の綱手に帰る旨を知らせていたため、入里手続きは簡単に済んだ。
「お疲れ様です」と声をかけてくれたので、きっと長期任務帰りだと思われたのだろう。
実際そうではないのでなんだか申し訳なく思ったが、お礼を言って里に入った。
賑わう商店街も、この道も、あの森も、あの丘も。
何もかもが懐かしかった。
たった三年。
されど三年。
この里で、辛く悲しいことはたくさんあった。
けれど、楽しく幸せな日々はそれ以上にあった。
((帰って、きたんだ))
里の風が、おかえりと囁く。
その優しい声も、修行を重ねた今では聞くことも容易くなった。
帰ってきたら最初に火影に報告ーーーそれが筋だろう。
しかし、リエには行かなければいけないところがあった。
あの約束を、果たすときがようやく来たのだ。