第2章 鈴取り再戦
ざぁっと、一瞬強風が吹き付けた。
リンリン、と鈴が風に揺れる音がする。
通り風が抜けると風で乱れた長い髪を正し、リエは笑みを見せた。
「先生。“鈴を取る"任務でしたら、すでに達成しました」
「え?」
「ほら」
リエが右手を開くと、そこには確かに鈴があった。
カカシが腰を確認するも、そこにそれはない。
間違いなく、今リエの手の中にあるのはカカシが持っていた鈴だ。
「…いつの間に…俺としたことが、全く気が付かなかったな」
「そうでないと困ります」
はい、とリエから投げ渡された鈴をカカシが見ると、鈴がついていた紐が鋭利なもので切られていた。
リエは対峙してから一歩もその場を離れておらず、クナイを投げた様子など微塵もない。
だとすれば…
「…これ切ったの、もしかしてカマイタチ?」
カカシの問いに答えるように、リエはまたにっこりと笑った。
先程の強風に紛れさせて鈴の紐のみに小さなカマイタチを発生させ、紐だけをを切ってそのまま風に鈴を運ばせた。
そんなことが出来るのは、風使いの末裔であるリエの力に他ならない。
カカシに気が付かれないように素早く、特に何の動作もせず風のみで獲物を取ってみせたリエ。
これだけでも、彼女の成長が垣間見える。
「まだスタートって合図出ていませんから、今のは無効、ですよね」
その言葉もまた、昔カカシがナルトに言ったものとかぶせてくる。
あの頃とは全く違った態度に顔つき。
彼女は本当に立派な忍になったと、カカシは嬉しく思った。
カカシもリエの実力を見越して、左目の写輪眼を開眼する。
「それじゃぁ、始めようか」
「はい。よろしくお願いします」
たとえ惚れた相手とはいえ、気を抜けば本気で殺られる。
そう思わせるほど、彼女の瞳からはものすごい気が放たれていた。