第2章 鈴取り再戦
肘で受けたリエの拳は、ガイのそれに引けを取らないほどに重たく若干の痺れを覚える。
彼女の細足から繰り出される回し蹴りは風を切るほどに鋭く、まともにくらえばひとたまりもないだろう。
そのスピードも相まって、普通の忍であれば攻撃回避も困難極めること間違いない。
カカシが後ろに飛び退くと、リエは印を結んだ。
その手の動きもまた早く、リエがいかに修練を積んで来たのかそれだけでもわかるほど。
「この印は…!」
写輪眼で見据えたその印は、間違いなく風性質を持つリエからは想像出来ないものだった。
直後、背後に気配を感じ身を翻すと、自身がいた場所に水の塊が飛んできた。
地面にぶつかってただの水にもどったそれだが、地面に小さな穴を開けるほどの威力があったようだ。
「水遁…水牙弾…。性質変化まで出来るようになったのか」
それだけでももう上忍レベルにまで達している。
しかしリエは自身からではなく、カカシの背後から攻撃を仕掛けてきた。
水場のないここで水を扱うのは容易いことではないし、自ら発した水ならば背後からというのはほぼ不可能だろう。
チラリと背後を窺うと、その原因がわかった。昨日の天気は雨。今でも地面がぬかるむほどの豪雨ではなかったが、地面の凹みに雨水が溜まっている。
とはいっても、こんな少量であれだけの水弾がつくれるのは、リエの実力だろう。
ただの“鈴取り”。
リエの実力を見るための戦い。
だから自分は、そうそう手は出さない。
そう思っていたのだが、それでは自分の身も危ういようだ。
カカシも印を結び、リエに向かって術を発動する。
火遁・豪火球の術。
炎の球はいとも容易くかわされる。
何発も飛ぶ炎を軽やかに回避するその様は、まるで蝶が舞っているようにさえ見えた。