第1章 帰郷
すでに居酒屋以外の店は閉まっていて、明かりが少なくなった道をカカシとリエは並んで歩く。
リエの家に向かう道中は元々人通りの少ない道なのだが、昼間とは打って変わって静かなものだった。
「この里は…変わりませんね」
ポツリとリエがそう呟く。
「ナルトくんと私以外の同期の皆はもう皆中忍で、ネジさんはすでに上忍になっているってさっき聞いて、皆確実に成長しているなって思ったけれど…ここは私の知っている温かい里のままだった。里も、里に住む人達も、私を温かく迎えてくれました。嬉しかったです、とても」
「そりゃね。リエは大事な木ノ葉の仲間じゃない。皆、ずっと待ってたんだから」
そう言うとカカシはそっとリエの頬に手を置き
「リエに笑顔が戻ってよかった」
と、目を弧にした。
しかしそのとき、カカシの指先に肌ではない冷たい何かが触れたことに気づいた。
リエの髪に隠れて見えていなかったが、確かに彼女の右耳に紅いピアスが存在している。
里を抜けた元七班の部下、リエの恋人でもあった、うちはサスケがいつからかつけていたピアス。
彼が里を抜けた後から、その片方をリエがつけていたのはカカシも知っている。
それだけで、彼女が今もサスケのことを想い続けているのだと悟り、一瞬顔を曇らせたカカシは何も言わずに手を離した。