第1章 帰郷
((サスケ…お前はどこまで俺の邪魔をしてくれるんだ全く…))
昔からそうだった。
自分がリエに少し構うだけで、サスケは殺さんばかりの勢いで睨み付けてくるわ、蹴りを入れてくるわ。
上忍師に対して敬意のカケラもない。
そんなに嫉妬しなくても、そんなに牽制しなくても、昔からリエはサスケのことだけを見ているというのに。
クールを気取っているサスケの豹変が面白くて、昔はからかうつもりでリエに構っていたのだが、それはいつしか変わっていた。
一途に愛する人を思い、ひたむきに努力するリエの姿を、ずっと見て来た。
彼女に対しての思いは、師としての責任とか、親心とか、そういうものだと思っていた。
だが、先程成長したリエを見たときに気付いた。
リエに対する感情が、愛だったのだと。
彼女を、リエを、自分の手で幸せにしたい。
教え子とか部下とか、そんなの関係なしに、一人の女性として愛し、守りたいと思った。
しかし彼女の心は今も他の男に向いている。
リエの気持ちは簡単には揺るがないということも、十分わかりきっている。
((…それでも、彼女の気持ちを踏みにじったお前に、遠慮したりしないよ、サスケ))
今はここにいないサスケに心のうちで宣誓布告をし、カカシはふっと笑った。
「リエ、これからも、いつでも俺を頼りなさいね」
そう優しく言うと、ありがとうございますとリエは微笑んだ。