第1章 帰郷
「今日はごちそうさまでした」
千鳥足の上忍達の背中を見送り、やれやれとタバコに火を付けたアスマにリエは礼を言い、ぺこりと頭を下げた。
「なに、俺が誘ったんだし当然だろう。帰還祝いにしちゃ安すぎるがな」
アスマはそう言うと、タバコを加えながらニッと笑う。
それに応えるように、リエも柔らかい笑みを浮かべた。
「お誘い頂けて嬉しかったです。本当にありがとうございました」
「おう、またな」
「はい、また。シカマルくん、カカシ先生も、ありがとうございました。おやすみなさい」
そう挨拶をし帰ろうとするリエに、「送っていくよ」とカカシが声を掛ける。
「大丈夫です、カカシ先生。まだそんな遅くないですし」
「心配だから。送らせて」
「私もそれなりに強くなりましたよ?」
「だろうけど。久しぶりなんだから、二人だけでも話したいじゃない。迷惑?」
「いえ、とんでもない。じゃぁ、お願いします」
そんなカカシを見て、アスマはギョッとする。
今までどんなにいい女が言い寄ってきても、家まで送るなんて言ったこと一度もなかったカカシが、と。
((いや、部下だからだろ。話したいとか言ってるし。いやでも、部下にあんな言い方するか?リエがいくら美人になったからって…まさか、なぁ?))
そんじゃね、とアスマに言って、ぺこりと頭を下げた後帰っていくリエと並んで歩くカカシの後姿を、複雑な心境でアスマは見送った。
「……シカマル、お前カカシにいいとこ持っていかれてるぜ?」
「は?変なこと言ってんなよ」
「リエは今言ってみればフリーだろ?お前にだってチャンスはあるぞ。好きなんだろ?昔から、あの子のこと」
「…そんなんじゃねーよ」
言ってアスマに背を向けるシカマルだったが、チラリとリエの後ろ姿を盗み見ていた。
((フリー…ねぇ。傍にいないからって、想いが消えるわけじゃねぇだろ…))
どうしようもないと頭でわかっていても想い続けている、自分のように。