第1章 帰郷
「カカシ先生、シカマルくん。お元気そうで何よりです」
隣に座るリエの髪から、洗いたてなのかふわりと甘い香りがした。
何故か、急に鼓動が早くなった。
シカマルは気がおかしくなりそうな自分を必死で抑える。
((落ちつけ、落ちつけオレ!なんでこうなってんだよ!))
そんなシカマルの心知らず、リエは微笑みをシカマルに向けてくる。
「シカマルくん、今更なんだけど…三年前の旅立ちの日は本当にありがとう。あんなに朝早くから待っていてくれて、すごく嬉しかった。あのときにお礼、ちゃんと言えなくてごめんね」
「あー…いや……別に」
ろくな返事が出来ない自分が腹立たしかった。
それにしても、とシカマルは思う。
((笑顔……戻ったな))
サスケがいなくなってリエから消えた表情が、また戻ってきたことが嬉しかった。
それと同時に、自分の知っている笑顔とも少し違うところが、少し気がかりでもあった。
「あと、あの後ヒナタに鍵預けてくれてありがとう。ヒナタ、大事に持っててくれたよ」
「いや…そうか、そういやあのとき、帰ったらヒナタに最初に会いに行くって言ってたな」
「覚えててくれたんだ。うん、ヒナタには帰って来てすぐ会いに行ったんだけど、まだ他の友達に会えてなくて。今日の集まりに私だけじゃなくてシカマルくんを誘ってくれたアスマ先生に感謝しかないな。シカマルくん、皆は元気?」
「あぁ、相変わらずだな。…ナルトはまだ戻って来てねーけど」
「戻ってきてない…って?」
「ナルトは自来也様と一緒に国外に修行に出ているんだ。それからサクラは、今は綱手様の元で医療忍術を学んでいるよ」
そう割って入ったのはカカシだ。
今まで呆けたようにポカンと口を開けて黙ってリエを見ていたかと思えば、今度はいつもの読めない笑顔ともまた違う、胡散臭さが微塵も感じられない笑顔を見せたカカシに、シカマルは少し驚いた。