第1章 帰郷
彼女の姿を見て、思考が停止しそうになった。
さらりと流れる美しい長髪に、整った顔立ち。
彼女自身は柔らかな雰囲気を纏っているが、瞳からは意思の強さを感じ取れる。
すらりと伸びる手足は、程よく引き締まっていて美しい。
突然現れたその女性に、シカマルは目を釘付けにされていた。
「お、待ってたぞ!こっちだ、こっち!」
シカマルの隣で、アスマが片手を挙げて彼女を呼ぶ。
そのときシカマルは、ようやくアスマが自分をここに呼んだ理由がわかった。
「遅くなってすみません。少しだけ休むつもりが、気が付いたらこんな時間まで寝てしまっていて…」
「長旅で疲れていたんだろ。全然気にすんな!」
気が付けば、彼女とアスマの声だけが店内に響いていた。
周りの客も、酔っ払っていたはずの上忍達までもが皆、声を発することも出来ずにその女性に注目していたのだ。
皆の視線に応えるように、彼女は微笑んで言った。
「皆さん、ご無沙汰しています。空風リエ、本日木ノ葉の里に戻ってきました」
それを聞いてシカマルはハッとする。
成長したとはいえ、リエの面影がなくなったわけではない。
いつものシカマルならすぐにリエだとわかったのだろうが、あろうことか冷静さを欠いてしまった。
シカマルの、いや、その場にいた者の心を奪うほどに、リエは美しくなっていたのだ。
「なんとぉ!?リエかぁ!!すごい美人になっちゃって先生わからなかったぞぉ!!!」
「はいはい、酔っ払いは黙ってな」
顔を真っ赤にしてそう叫んだガイにそう言うと、アスマはリエに自分の席を譲りガイの隣へと移動する。
その際、「頑張れよ、シカマル」などと小声で言うアスマが恨めしかった。
何をどう頑張れってんだ。