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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第1章 white eyes



 無くした記憶を補填して、神羅周辺の出来事に注視すれば、彼女が本来見ることのできなかった記憶の数々が流れてきた。

「部外者は口を出すな」
「君は本当にそれでいいのか?」
「なんで『君は』なのよ! 私? 私だけの問題ならあなたには関係ない!」

白衣の女性ルクレツィアがヴィンセントを拒絶する。
本当は止めてほしい。部外者としてたしなめるのではなく、当事者としてもっと踏み込んでほしかった。彼をフッたくせに、控えめな『君は』という言葉が何故かとても不快に感じられた。

(これは、ルクレツィアの記憶の断片?)

景色が変わる。

ポッドに入ったヴィンセントの遺体を蘇生するため試行錯誤を凝らしたが、彼は目覚めない。体がまだ人の形を保っているうちに、蘇生させなくちゃならないのに。
ルクレツィアにはもう手が残されていなかった。
そして

『星の淀み生まれし魂 汚れ除き清き流れ 終わり名を持つオメガへ導く
  その名はカオス 星の海への導き手』

彼女は一か八か、かつて研究していたカオス因子を彼の体に埋め込んだ。
暴走する彼の肉体。赤の魔物へと変貌したヴィンセントを見て、ルクレツィアは悲鳴をあげる。

「どうしてうまくいかないの!? もう、彼を返してよ!」

エゴというのはわかっていた。それでもどうしても彼に生きていて欲しかった。
どうして? 自分に問いかけてみる。

「あ……、……わかっちゃった。……何やってんだろ、私」


ルクレツィアの記憶はそこで途切れる。

 シャロンの頬にはいつの間にか涙が流れていた。
彼女自身、涙の理由はわからなかった。
いくつもの感情が押し寄せて、許容を超えてしまったのだろう。

「ルクレツィアはやっぱり、彼を愛していたんだ」

複雑な涙が彼女の頬を溶かしていき、シャロンは再び光の流れに身を委ねた。
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