第10章 ONE MORE KISS
リーブが主役の二人を泉の前に誘導し、式を進行する。
「それでは、僭越ながら私が神父役を務めさせていただきます」
リーブが二人を中央へ並ばせ、しめやかに式が執り行われた。
「こちらにお集まりいただいたのは、披露宴の会場へ行く前に、かつての仲間達で彼らをお祝いしたいと思ったからなのです。ここならば、皆が集まれる。そう思いました。お二人の誓いを、私たちが見届けます……」
様々なことがあったこの地で、これまでの出会いと別れを思い浮かべながら、新たな時代に思いを馳せた。
「それでは、誓いのキスを」
「はい……」
「シャロン、顔を下に向けていては口付け出来ない……」
ヴィンセントが小さく耳打ちする。シャロンは照れてつい俯いてしまっていた。
「あっ、そっかごめん……」
シャロンが謝りながら目を瞑って顔を上げると、ヴィンセントはフと笑って、シャロンの肩に手をやり、触れるような接吻をした。
ほんの数秒のはずが、永遠のように感じた。胸が高鳴り全神経が唇に集中して囃し立てる周りの声も聞こえない程の特別な口付け。
唇が離れ視線が絡み合うと、彼が優しい瞳で彼女を見つめていた。
「シャロン……愛している。初めて出会った、あの時から……そして、これからも永遠に」
アイスブルーの淡い光に包まれて、二人はもう一度誓いの口づけを交わした。
いばらの涙 『完』