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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第10章 ONE MORE KISS


 ヴィンセントはきゅっと服を掴むシャロンの愛らしい手を握り、彼女が顔を上げるのを待った。そして目が合うと彼女の涙を拭ってやり、真剣な表情で彼女を見つめた。

「シャロン……この折に、言っておきたい事がある」
「う……ん……?」
「率直に言うぞ」

突然のことにシャロンは動揺しつつ、真っ直ぐ彼を見つめる。
ヴィンセントは、心を落ち着けるように息を吸ってからシャロンの瞳を真っ直ぐに見つめ返した。初めて出会ったあの時のように。

「シャロン、私と一緒になってほしい」
「一緒……? え……?」

シャロンの顔がまたみるみる困り顔になると同時に頬が赤く染まり、再び瞳が潤み始める。

「君を泣かせてばかりだな……」
「ううん……あの……一緒っていうのは……」
「あぁ……私はこれまで、今更形式ばったものはいらないと考えていた……だが……私は案外欲深いらしくてな……」

ヴィンセントが、美しい花を象った指輪を差し出す。

「確信したいのだ……。この先何があっても……二人の想いは変わらない、通じ合っていると……。嫌か……」
「い、嫌なわけない、嬉しい……」
「そうか……。君は、人を頼りにするのが苦手で……一人で抱え込んでどこかへ行ってしまう癖があるからな。その度探しに行くのも嫌いじゃないが……私も不安に襲われる……知らない場所で君の身に何が起こっているか、考えるだけで心が焦れる……だから、もう離したくない……これからは、伴侶として私の側で共に生きてほしい」

シャロンは涙を堪えるのに精一杯で、気の利いた言葉が見付けられず即答できなかったが、考えても何も思い浮かばなかったので、観念してヴィンセントの瞳を見つめ、頷いた。

「……私を、ずっとずっとあなたのお側においてください」

言葉を聞き、ヴィンセントも緊張が解けたように口角を上げ、彼女の薬指に指輪をはめると再び抱き寄せた。
側にある愛しい人の存在を全身に感じてから体を離すと、今度はシャロンの顔をまじまじと見つめる。

「な、なぁに?」
「今この瞬間の君の顔をよく見ておきたくて……」
「いやっ、恥ずかしい……」

ヴィンセントはからかうように笑むと、照れて顔を隠すように俯きかけたシャロンの顎を指ですくって、無防備な唇に熱い口づけをした。
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