第9章 MARIA
星の中心部で、セフィロスとシャロンは星のエネルギーの流れが変わっていくのを感じていた。
「セフィロス、外では一体何が起こっているの?」
「滅びようとしている」
「え?」
「星が、世界を終わらせようとしている」
シャロンは、思ってもみなかった重大問題を聞かされ言葉を失う。
「このまま消えてなくなるならば、それもいいだろう。新たな星で再び命はめぐる。……お前はどう思うんだ?」
「……いやよ。私、あの人に会いたい。私はあの人のいるこの世界が好きよ。この星はまだ、人々が笑顔になれる世界。滅んでしまえば、生きているからこそ感じられる痛みや喜び、それも全てなくなってしまう」
「……そうだろうな。お前は、そういう女だ」
シャロンの頭をぽんと撫で、セフィロスは口角を上げた。
「いいだろう。お前を手伝ってやる」
「私に何が出来るかしら」
「既にオメガが生まれている。オメガが飛び立てば、この星の全ての命がそれに追従し、次の星へ向かう。お前はそれを止めろ」
「そんなことが、私に出来るの……」
どうやって、と呟く彼女をセフィロスが突き飛ばし、なす術もないままライフストリームの流れに足を踏み入れてしまう。
「出来るんだ、お前なら。お前には本来その素質がある。この星の……」
「なに? 聞こえない!」
激流に飲まれ、セフィロスの声が遠くなる。元の場所へ戻ろうとするが、強い引力に逆らっているような感覚で、気を抜けばすぐに吸い込まれてしまいそうだった。
「そのまま身を任せろ! お前の肉体と繋がるはずだ。後のことは、お前の選んだ男に委ねるがいい!」
「そんな、セフィロス!」
「俺が母に再会出来るよう、頼んだぞ」
シャロンははっとした表情を浮かべた。自分の使命を知ったような気がした。彼女は流れに飲み込まれ、気付けば薄く透けていた身体が光を通さない実体に変わっていた。
そして、今どこにいるのかと辺りを見回してみれば、爆発する魔晄炉に取り囲まれているのが確認できた。
どうやら彼女はオメガの中に取り込まれているらしい。
今までセフィロスといた緩やかな流れの中とは違い、強い瘴気に当てられているようで自由が効かない。しかし念ずれば不思議とオメガに巡るライフストリームの循環も遅くなるように感じる。
止められる気がした。シャロンはその場で祈りを捧げる。
