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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第9章 MARIA


 ライフストリームにシャロンの肉体が落とされる少し前。
シャロンは、セフィロスの思念と共にいた。
決着がついたようで続きがありそうなクラウドとセフィロスの関係性だったが、それはもう終わりを迎えていた。
というのも、セフィロスにはもはや世界に戻る術がないからだ。
もしあれば、ディープグラウンドの世界の刈り取りなどという勝手を許すはずがないだろう。
ネットワークとも現とも違う空間にセフィロスの思念は留まっていた。世界に未練を残し星へ還ることを拒むが、再び世界に思念体を生み出すまでのことはしなかった。
彼の傍では、シャロンが歌を口ずさむ。セフィロスは心地よくそれを聞いていたが、ふいに笑みを溢し彼女の歌を遮った。

「悠長なことだ。こうしている間も表の世界は荒れているぞ」
「そう、私には表の世界が見えないけれど……」
「それは、お前がまだ生きている証なのかもしれないな」
「だけどなんとなくわかることもあるわ。いつも側に誰かがいてくれる気がするの。それに、愛しい声も……」

胸に手を当て微笑む彼女に、セフィロスは呆れたように笑った。

「お前は多くの人間に愛されているからな」
「だとしたら、ありがたいことね」
「ありがたい、か。俺は、愛など迷惑なものだと思っていた。一方的に愛をぶつけてくる女達や、愛を受け入れさせようとするお前も、うんざりだった」

シャロンは小さく笑ってセフィロスの微かな心境の変化を喜ばしく思った。
頑として突き放していた愛について過去形で話す彼は、ジェノバとは切り離された、英雄時代の彼に見えたから。

「愛には様々な形があるわ。だから時に恐ろしく感じてしまうのね」
「俺はお前を愛していた。……だが愛し方がわからなかった。街の女達と愛し合う感情と、お前に対する感情は明らかに違った。だが……お前への欲求は街の女との行為と同じで……俺は、自分がおかしいのかとさえ」
「意外だわ。大人になったあなたはいつも誘惑的で私を困らせていたもの」

セフィロスはひとつ笑い声をこぼした。

「そうだったな。だがお前は俺に振り向く事はなかった。手に入らないのなら、壊してしまいたい。次第にそう思うようになった。それでも俺は、本当にお前を」
「ありがとう、セフィロス。あなたの想いを疑った事はなかったよ」
「……だが今ならわかる。俺では、お前を幸せに出来ない」
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