第7章 death wish
ディープグラウンド内部を進むヴィンセントの前に、闇を操る男、ネロが立ちはだかっていた。
ネロは、ヴィンセントがどちらかといえば自分達に近い存在だと思い放っておいたが、どんどんヴァイスに近づいていくのでこれ以上進むならば消去すると言う。
「あと少しで兄さんは……」
「シェルクはどうした?」
「? ……シェルク? ああ、そういえばどうしたのでしょうね? 確か、空に材料を回収しに行った時、ボクに向かってきた気がしました。多分、ボクの中で消えてるんじゃないですかね?」
ヴィンセントはネロに銃口を向ける。
ネロの攻撃はヴィンセントと同じく銃撃がメインだが、羽を持つため上空からの攻撃がある。
しかしヴィンセントは冷静にネロを撃ち落とす。
「なるほど。アスールやロッソが敗れたのも無理はないかもしれませんね。でも、そろそろ終わりにしましょう」
ヴィンセントの周囲を闇が取り囲む。
ネロは、静かな闇をじっと見守るが、ヴィンセントは以前のように直ぐに出て来る様子がなかったのでその場を離れようと踵を返す。
しかしその時、闇の中からヴィンセントとシェルクが飛び出し着地した。
「そうですか……。カオス、命の淀みより生まれし生命。だから、その淀みを埋められたボクの闇は効かない……。そういうことですか」
ならばとネロはより大きな闇を周囲に展開する。
辺り一面を飲み込まんとする勢いを十字手裏剣が止めた。
ユフィが瓦礫の上から高らかに口上をしている間、ネロは動きを止め「兄さんが呼んでいる」と言い残し闇に消えてしまった。
ヴィンセントは銃を片付けると、傍に倒れるシェルクを気遣った。
「大丈夫か?」
「ええ、夢を見ました。いえ……夢ではないですね」
もはやシェルク自身の記憶でもあるルクレツィアの記憶と、シャルアの幻影。感傷に浸っていると、ユフィが痺れを切らして彼らに呼びかける。
「お〜い、無視すんな!」
ぴょんぴょんと飛び跳ね存在をアピールするが、足元が悪くユフィは瓦礫の上から落下してしまう。
顔面から着地するユフィを目の前に見て、ヴィンセントは深いため息をついた。