第7章 death wish
グリモアの名前を呼ぶルクレツィアの悲痛な叫びが響く。
「息子に……ヴィンセントに……すまないと……」
「ダメです! しっかりしてください!」
「じゃあ……ボクは……先に星へ還るよ」
グリモアの身体に泣きつくルクレツィアの腕がふいに支えをなくすと、彼の身体は光となって消えていった。
「いやあー! いや、いや! なんで、なんで消えちゃうの? なんであなたが……!」
グリモアがカオス因子の暴走から自分を庇って死んでしまった事が受け入れられず、ルクレツィアはその場に打ちひしがれてしまった。
ビジョンを俯瞰で見るシェルクは、大丈夫、星に還っただけだから。と届くはずのない慰めの言葉を呟く。
この台詞は、シェルクが以前母親が亡くなった時にシャルアからかけられた言葉だった。
『この星の命は巡ってるんだ。母さんが言ってた。だから大丈夫、また会えるよ』
「姉さん……」
闇の中でぽつりと呼べば、シャルアの思念のようなものが隣に現れる。
「ねぇ、私も星に還っていいかな」
「……だめ。私……まだ、お姉ちゃんに……」
「大丈夫、また会えるよ」
夢から醒めるように顔を上げると、頬には涙が伝っていた。とっくになくなっていると思っていたそれはシェルクに人の心が残っていることを知らせてくれる。
しかし、魔力が尽きるのは時間の問題だった。ヒビの入ったシールドの中で、シェルクは一人膝を抱えていた。