第7章 death wish
アスールは殺し合いを楽しむように、もっと自分と戦えと叫ぶ。
ヴィンセントは、重い体を起こすと、カオスを発現させアスールの大型の銃器を奪い彼に突き刺し、身体を貫通させた。
銃撃では留めを刺せなかったが、身体を貫いた傷を見てアスールはさすがに負けを認めた。
「貴様の方が……我より化け物だったようだな……」
カオスがエネルギー砲を浴びせると、それはとうとう最後の一撃となった。
その戦いを、エレベーター上部から闇を纏った男が静観していた。
「なるほど、あれがカオスですか。命の淀みより生まれしウェポン。伝承通り全ての命を狩り取るならそれもいいでしょう」
ネロはカオスが目覚めてもオメガの発動を手伝うだけだと考え、ヴィンセントには手を加えなかった。彼が闇に姿を消すと、シェルクの携帯がその闇から溢れるように落ちる。
ヴィンセントはカオスの暴走に気を失ってしまうが、エレベーターが最深部へ着くと苦みつつ身体を起こした。
ヴィンセントは平気なように振る舞うが、カオスの暴走によるダメージは身体に堪えるらしかった。
ヴィンセントがシェルクの携帯に気付き拾い上げると、異常さを察知しディープグラウンドの先へと急いだ。
しかし、中心部へ近付くと、突然大きな闇に襲われる。
闇に共鳴しカオスが発現するが、シェルクの携帯からルクレツィアの人格が語りかける。
"同じ闇より生まれし命を持つあなたならこの闇に捕らわれないはず"
ヴィンセントは、ルクレツィアの誘導に従い、闇から抜け出すことに成功した。
ルクレツィアの人格を使って彼を誘導したのはシェルクだ。
シェルクは同じくネロの闇の中に取り込まれていたから語りかけることだけは出来たのだ。しかし魔力を使いシールドを張るので精一杯のため、自身が抜け出す事は出来ずにいる。
魔力が尽きても死ぬだけだと諦める彼女に、まだ見ていなかったルクレツィアの記憶が浮かび上がってくる。
ヴィンセントの父、グリモアとルクレツィアの共同研究の足跡。カオスの発見、カオス因子の暴走、グリモアの死。