第7章 death wish
ヴィンセントは、先程シェルクから案内があった通り神羅ビルの社長室へ向かった。
ディープグラウンドの抵抗を押し切り、なんとか地下へ続くエレベーターを発見する。
機械に弱い彼だが、なんとかエレベーター位は動かせるだろうと辺りを見回していた時、携帯に着信が入る。
「あっ、繋がった!」
「……ティファ?」
「なにぃー! 繋がった? うぉーーー! ヴィンセント! 生きてっか?」
「生きてるから電話に出てるんでしょ? 耳元で大きな声で出さないでよ。ごめんね、クラウドに代わるわ」
電話を離しても聞こえる声はバレットだ。どうやら地上部隊も無事らしい。
直ぐにクラウドに繋がる。そこで、彼の口からシエラ号と連絡が取れなくなった事が伝えられる。シドとリーブのことだから心配ないとは思うが、と。
ヴィンセントはすっと血の気が引いたような気がした。シエラ号に残してきたシャロンの身を案じてのことだ。
「ヴィンセント」
「分かっている。世界が無くなれば元も子もない」
「ああ、こっちも大丈夫だ。だから……」
「私は先へ進ませてもらおう」
「頼むぜヴィンセント!」
バレットが話す度鼓膜が破れそうになるが、いつも通りの彼らの様子が今のヴィンセントには少しは救いになった。
クラウド達との通信の後で、ティファから神羅ビルの地図が送られてくる。
ディープグラウンドへは目の前のエレベーターに乗れば勝手に下へ進んでいくらしい。
しかし、エレベーターではツヴィエートの一人、アスールが待機していた。
「ロッソは、死んだか……」
亡き戦友を悼んでいるのかアスールは目を瞑るが、ヴィンセントの身体に漂う闇に気付くとその闇を凝視した。
「ほう、目覚めようとしているのか。……あれと同じ臭いがするわ」
ツヴィエートの中には闇を操る人物がいる。ヴィンセントの闇とネロの闇は同じ性質を持っていたのでアスールには同じ臭いに感じられたのだ。
「見せてみろ、貴様の力を!」
そして、降るエレベーターの中で《殺し合い》が始まる。
カオスを抑えつつ闘うが、アスールは不死鳥のごとく何度も甦る。
死と蘇生を繰り返し、魔獣の姿になった彼をついに仕留めたと思った矢先、アスールが執念で起き上がり、ヴィンセントの身体を弾き飛ばした。