第7章 death wish
ルクレツィアの声と重なったシェルクの呼びかけにヴィンセントは我に帰った。
「なん、だ? カオスなのか……? なぜ、今になって」
「本当に何も知らないのですね。今のあなたは、カオスを制御していたエンシェントマテリアを失い、とても不安定な状況にあります」
「カオスの制御? エンシェントマテリア……?」
「はい、ロッソによりあなたの体から取り出されたものです」
シェルクがルクレツィアの記憶を見せる。
カオス、混沌をもたらすもの。星が終わる時、オメガのために全ての生命を狩り取るもの。
ルクレツィアの電影がヴィンセントに語りかけていた。
「それがカオス。あなたの中に宿ってしまったもの。……ごめんなさい。でも、カオスに負けないで。私は、あなたに」
最後まで言い切らぬうちに、ルクレツィアの電影が消滅し、シェルクとヴィンセントの通信も途切れてしまった。
原因はシエラ号に起こった異変だった。
飛空艇では、舵を離せないシドが後方と通信が途切れた事を憂慮していた。
シェルクはシドから状況を聞き、後方を自分が見てくると手を挙げた。
「すまねえ、頼む!」
頼むという言葉にまだ慣れない様子を見せつつ、シェルクは後方へと急ぐ。
エンジンルームへ着くと、闇に荒らされた痕跡が残っていた。
「まさか」
「こんなところで会うなんて、奇遇ですね」
ツヴィエートの一人でヴァイスの弟である、ネロという男がそこにいた。
彼は闇を自在に操ることが出来る。彼を知るシェルクは辺りに漂う闇の痕跡がこの男の仕業なのだろうということが想像できたが、その目的を図れずに聞いてみる。
「何をしにここへ?」
「あと幾ばくかの命が必要でしたので、少しばかり調達に来たんですよj
「ここの人たちは?」
「ははは、おかしな事を言いますね。見ての通り、既に回収は終わりました」
「そう……」
側にはケット・シーが倒れているのが見えた。
シェルクはリーブの言葉を思い出し、ネロに向けて武器を構える。
「何をするんですか?」
「さあ、私にもよく分かりません。ただ、一度受けてしまった頼みを反故にするのは気持ちが悪い、ということはわかりました」
ネロに攻撃を仕掛けると、彼は身体から伸びる羽のような武器から弾丸で応戦する。しかしシェルクはシールドを張れるため弾丸が効かない。
ネロはその身に闇を纏わせ、シェルクを取り込んだ。
