第6章 Cube
初めて君に出会った時の衝撃は今でも忘れられない。
月明かりが照らす中、長い髪と白い服が風に靡いて、その姿はまるで天女が舞っているようだった。大袈裟に聞こえるかもしれないが、本当の事だ。初めて赴いた旅先での事だったし、花の咲き誇るあの泉の周辺は本当に楽園のように見えていたからな。
そんな君に私は一目で心を奪われた。
子供だった私達はその後一度は別れる事になった。
あれから私は、もう一度君に会いたくて父に頼み込んでボーンビレッジの様子を聞き出したのだが、花の一族の痕跡は確認できないと言われた。その後父は実験中事故で他界し、君の消息もわからずじまいとなった。
納得のいかなかった私は神羅に入社し、訓練生時代にボーンビレッジの調査を志願した。だが結果は父の言う通りだった。花は枯れ、木々は白く朽ち、花の一族の生活していた場所が特定出来ないほどに荒れていた。
かつて君が言っていた、もうすぐこの景色も見られなくなるという言葉。それが現実のものとなっていたことに衝撃を受けた。
あの頃はその言葉の意味を追求できなかったが、君がいなくなってしまったことを知り、私は後悔した。いつか君を迎えに行き、共に暮らす事を夢想していたからだ。
……それも叶わなくなり、私は独りになった。
私は銃に明け暮れた。1人の女性も護れない自分に嫌気がさして……何かに没頭していなければおかしくなりそうだった。銃の技術を磨き、訓練生時代を終えるとそのまま神羅の総務部調査課に配属された。そして与えられた任務がルクレツィアの護衛だ。
美しく温かな彼女と過ごしていくうちに、いつしか彼女を護ることが生きがいとなった。
数年の時が経ったある日、ルクレツィアが宝条のラボに視察に行った。
そこで、私は君と2度目の衝撃的な出会いを経験する。