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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第6章 Cube


 シャロンの肉体は光を取り込んでいるかのように透明で、内から輝いているような清浄さを感じさせた。
ベッドの脇に腰掛け、彼女の無事を確認する。
治療部隊が定期的に検査をしに来てくれる手筈ではあるが、ヴィンセントはどうしても不安でシャロンの腕を取り脈を見てしまう。
脈も呼吸も正常であることがわかると、ヴィンセントは一つ息を吐く。

「シャロン……もうすぐ作戦決行の時間だ。そばを離れるのは心苦しいが」

ヴィンセントの独り言が妙に広い部屋に響く。
オメガが目覚めれば、世界の何もかもが無くなり、この星は静かな死を迎える。傍観者として、ただ黙って見ていることもできる。しかしそれは今の彼にはない選択だった。

「私はオメガを止める。……その後の未来は、君と共に有れたら……」

華奢な彼女の手に自分の手を重ねる。
彼女からの返答はない。生きているだけで十分だと自分に言い聞かせるが、願わくば笑顔で送り出してほしかった。
ただ、結晶体のままでいるよりは、こうして触れる事で生を確かめられるようになっただけでも彼の精神衛生的には大きな進歩ではある。

「そういえば……シェルクから聞いたのだが、君が神羅にいた頃に実験で引き抜かれた記憶がネットワーク上に放置されているそうだ……。あの頃話の噛み合わない事があったのは、記憶を操作されているのではなく、抜き取られていたのかもしれぬ……」

最後の戦いに赴く前に、ヴィンセントはこれまでの出来事を思い返していった。
そしてそれをシャロンに聞かせるように語り始めた。
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