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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第5章 Storm


 ヴィンセントはシャルアの研究室へ行く。ユフィが見守る回復ポッドには、シャルアの肉体が寝かされていた。彼女の身体はほとんど人工物のため、あれだけの損傷を受けてもなんとか肉体だけは回収できたようだ。だが、頭にも損傷を受け、奇跡が起きない限りもう二度と目覚めないという。

「バカな人」

シェルクが姿を見せたかと思えばそんな言葉を呟くので、ユフィは勢いよく立ち上がると彼女の頬を思い切り叩いた。
掴みかかりそうな勢いのユフィをヴィンセントは制止する。

「なんなんでしょう? なんで……」

シェルクは未だに現実が受け入れられていない様子でいた。
彼女なりにショックを受けている様子でそれ以上責めるわけにもいかないユフィはたまらず部屋を後にする。
ヴィンセントは、茫然と立ち尽くすシェルクにシャルアの話をしてやることにした。

「以前……、一人で何を探しているのかと尋ねたら、彼女は『私の命』だと答えた。お前こそが彼女にとって、命……なのだろうな」
「……私にはわかりません。なぜ、自らの命をかけてまで? あなたにはわかりますか? ヴィンセント・ヴァレンタイン」

シェルクが真っ直ぐな瞳をヴィンセントに向ける。
彼はその視線から逃れるように背を向けた。

「私は、彼女ではないのでな……。ただ……」
「ただ?」
「人は誰かを守るために……本当に大切なものを守るために命をかけることができる。それが人、なのだろう」
「本当に大切なもの……」

シェルクは知りたがりの子供のように二歩、三歩と離れていくヴィンセントの後をついていく。
ヴィンセントははぐらかすためにくるりと踵を返した。

「だがな……、なぜか私の周りには、理屈抜きで飛び出して誰かを助けるお人好しばかりだ」
「あなたも……」

シェルクは、まるでヴィンセントに引き込まれるように真っ直ぐに歩み、躓いてしまう。咄嗟にヴィンセントが受け止めた拍子に、ルクレツィアの記憶データが彼女の意識に干渉した。

遠い昔の出来事。神羅屋敷の外にある丘で昼寝をするヴィンセント。
ちょうどサンドイッチを持って昼餉にしようとその丘を訪れたルクレツィアと何気ない、何の変哲もない平和なひと時——
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