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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第5章 Storm


シェルクは襲いかかるアスールの動きをシールドマテリアで封じる。
その隙にシャルアはシェルクの手を引き隔壁を開けヴィンセントとシェルクを隣の部屋へ誘導した。
しかし既のところでシェルクがそれを拒む。

「放しなさい」
「やだね。あたし達はこれから10年を取り戻すんだ。だからこんな所で……」

隔壁が閉じていく。シャルアは自身の機械の腕を挟み隔壁の閉鎖を阻止するが、閉鎖速度を遅らせる事しかできなかった。
動揺するシェルクをなんとか隣の部屋へ突っ込むと、シャルアはもう間に合わない事を悟りシェルクに自身の想いを伝える。

「シェルク。ぜんぜんお姉ちゃんらしいことしてやれなかったな……。今まで助けられなくてごめんな。ヴィンセント、この妹を頼む」
「おい……!」

隣の部屋でヴィンセントは隔壁を開けようと全体重をかけるが、虚しくも閉鎖を阻止する事はできない。
シャルアの背後には、シールドの解けたアスールが迫ってくる様子がうかがえる。

「シェルク。生きててくれて、よかった……。今でも、大好き、だよ」

腕のパーツが完全に破壊され、隔壁が閉じる。

「なんで……?」

シェルクがつぶやくと、扉の向こうに大きな打撃音が響き、下から機械油のような液体が漏れ出してくる。それはおそらくシャルアのものと想像できた。

「バカ、みたい……。お姉ちゃん……」

ヴィンセントは歯を食いしばりその表情に悔しさを滲ませたが、頼まれてしまったものは仕方ないと、茫然とするシェルクの手を引き、なんとか部屋の形を保つ場所へと避難させた。

 アスールを回収したディープグランウドは撤退したものの、WRO本部の被害は甚大だった。
ボロボロになった司令室で、リーブは落胆し地面に座り込んでいた。

「情けないですよ……。ジェノバ戦役の英雄だなんだともてはやされても、このザマですからね……」
「……私も同じだ。……それで? お前はここで立ち止まる気か」

ヴィンセントは、一歩も動く気のなさそうなリーブに説教する。腰を折り、俯くリーブの顔を覗くように同じ目線になって言う。

「時を止めた私に、前へ進むことを教えたのは、お前たちだったんだがな」
「ヴィンセント……」

ヴィンセントには局長としてのつらさはわからない。しかし立ち止まってほしくはない。そんなヤワな奴じゃないと、信じてその場を後にした。
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