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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第5章 Storm


 気絶している間、ヴィンセントはまた夢を見ていた。

「本当なのか!?」
「何がだ」
「今回のプロジェクトにルクレツィア……ルクレツィア博士をと聞いたんだが」

部屋の奥からヒールの靴音が聞こえてくる。

「本当よ。それがどうかしたの?」
「お腹の赤ん坊を……実験に使うなんて……」
「はっ、お前が何をいいたいのかしらんが、彼女も私も科学者だ。それに、これは私たちの問題だ。部外者は口を出さんでもらおうか?」

宝条は部外者は口を出すなと言い放つが、ヴィンセントはその場を動こうとしない。

「いや……」
「何? 言いたい事があるならハッキリ言って」

苛立った口調のルクレツィアに、ヴィンセントも意を決して意見する。

「だから……、君は、君は本当にそれで……」
「なんで君はなのよ!? 私? 私だけの問題なら、あなたには関係ない!」

ヴィンセントは自分を部外者だなどとは思っていなかった。しかし、ヴィンセントの言葉はルクレツィアの欲するものではなかった。
相手を思うヴィンセントの言葉では、ルクレツィアに踏み込みきれていなかった。
そしてヴィンセントは身を引き、彼女はセフィロスを産み落とす。

見ているだけだった。彼女を止めなかったと自分を責めるヴィンセント。
次に頭に浮かぶのは実験で作り変えられた身体。激しい異物感。
これは罪に与えられし罰。かつて信じ込んでいた、自分にかけた呪いを振り返っていくような夢だった。
再び場面が変わる。
そこはルクレツィアの祠だった。

「君に会ったよ……。君と初めて出会った場所で。そこでも君は……。咎められるのは私の方だ……。あのとき、止めることができなかった、私の……」

一度はシャロンによって救いをもたらされていたが、その彼女は今側にいない。
彼女がいないというだけで、いとも簡単に後ろ向きな思考に引き込まれていく。
祠の中のルクレツィアは何かを伝えようとしているが、断片的でヴィンセントには伝わらぬまま、彼の意識は現実へ引き戻されていった。

 ヴィンセントが目を覚ますと、荷台で揺られていた。

「ここは?」

ふと人の気配に意識を向けると、そこいたのは麻のフードを被った少女ユフィだった。
元気はつらつとした彼女に再会し、少し緊張がほぐれたような気がした。
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