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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第1章 white eyes


 ジェノバが発見されてから、シャロンはただの滅んだ民族の生き残りとしてしか認識されていなかった。ただ、その人懐っこさゆえに人に好かれ、彼女を疎ましく思うものなどほとんどいなかった。

「ガスト博士、資料を持ってきました」
「ああ、ありがとう。コーヒーを頼んでもいいかな?」
「はい、ただいま」

ガストは、助手というよりは、秘書のような仕事を彼女に与えながら、居場所を作ってやっていた。
彼女の話を元に花の一族が存在していた場所を調べてみても、そこにはもう人の姿が見られず、一族は滅んだと見て間違いなかったからだ。
捕獲者にやられたのだろう、と彼女は言う。ガストは身寄りのない彼女を文明の外に連れ出した責任を感じていた。

「今日も社員が来ていたね。相談事かい?」
「はい、今日は恋愛相談でしたよ」
「はっはっは。随分頼りにされてるじゃないか」

コーヒーを差し出しながら、彼女は小さく笑った。
この頃から科学部門の階には、エレベーターがよく止まるようになっていた。客が客を呼ぶといった状態で、シャロンの元には連日来客があった。
そうして彼女は少しずつ発言権を得るようになってしまった。彼女がプロジェクトに反対すれば多くの賛同者がつく。彼女の倫理観は正しい。しかし科学者たちにとっては邪魔なものだった。
それでも彼女の倫理観のおかげで、ガストはある程度の正気を保っていられた。

一方その頃、ジェノバ・プロジェクトの開始とは別に、強化人間のプロジェクトがスタートしていた。ジェノバ・プロジェクトからヒントを得て開始されたこの宝条のプロジェクトは、人間がどこまで強くなれるか、その一点のみを追求する生物兵器のプロジェクトだった。あらゆる視点から強さを目指し、肉体強化、能力増強、情報処理などの特性を与えていく計画だった。

大きなプロジェクトが科学部門を動かす中、ガストが突然失踪する。
ジェノバを古代種と見誤って多くの命を犠牲にしてしまったことに責任を感じ、どうすることもできなくなっていた。奇跡的に生き残っていた古代種と知り合い、彼女を守るために彼は行き先も告げず姿を消したのだ。

そして、科学部門で孤立したシャロンを次に拾ったのは、宝条だった。
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