• テキストサイズ

FFVII いばらの涙 綺麗譚

第1章 white eyes


 流れる情景は、星が誕生した頃から今までに生まれてきた生命の出会いや別れ。この膨大な情報の中から自分の記憶を探すというのは途方も無い話だ。
シャロンは辺りを見回し、感覚だけを頼りに情報の海を進んでいく。心の中でヴィンセントを求めて探し回る。しかしそれがいけなかった。的を絞りすぎて、自分の記憶に気づけないからだ。
彼女は目を閉じる。赤い血の記憶はあたりに満ちている。他に必要な要素は、暗い海、赤い瞳。

『ヴィンセント!』

聞きたかった名前を叫ぶ声に目を開ける。
シャロンらしき人が肌を寄せて抱きしめるのは、若きヴィンセントらしき人物。そして彼の名前を呼んだのは、彼と同じ瞳をした初老の男性。
怪我をしたヴィンセントに駆け寄り、手当てをして二人の会話が続く。
あどけなさの残るシャロンが居心地の悪い思いをしながら不安そうにしていると、ヴィンセントに似た男性は、彼女に優しく微笑みかけた。

『ヴィンセントのことを助けてくれて、ありがとう』

そこでシャロンは彼の記憶を鮮烈に思い出す。

「グリモアさんだわ……。ヴィンセントの、お父様」

そして、そこから繋がる古い記憶。彼女自身の視点で見た記憶と、星の記憶が織り交ぜられて、彼女はできれば知らないままでいたかった過去をも知ってしまう。
一族の滅び、グリモアの死。
項垂れ、自分が眠りについていた間のいくつもの出来事を受け止めていく。
そして、星は間髪入れずに新たな記憶をシャロンに見せていく。

『これは、古代種ではないか?』
『まだそうとは……』
『大発見だ!』

深海から引き上げられたシャロンの棺。
本来ならば、このように強引に引き上げられることなく深海に眠り続けていたはずの肉体が太陽にさらされる。白く光る肌が彼女に一種の神々しさを与えていた。

神羅に引き上げられてから数週間に渡って検査が行われていた。
そしてその結果は研究者たちを落胆させる。
彼女の細胞は、普通の人間と変わらない一般的なものだった。
目覚めた彼女の境遇を哀れんだガスト博士は、そのまま神羅の研究室で彼女の身柄を預かることにした。
そんな頃だった。ジェノバが発見されたのは。
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp