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FFVII いばらの涙 綺麗譚

第5章 Storm


 ポッドで眠るシャロン。クラウドは彼女のこの眠り姿を初めて目にしたが、狭い容器の中穏やかな表情を浮かべる彼女がひどく哀れに思えた。かつて自分が魔晄漬けにされていた日々を微かに思い出した。

「どうしてシャロンがあんたのところにいる?」
「なに、偶然倒れている所を保護したに過ぎない」
「嘘をつくな」
「ふっ、カダージュだ。奴が置いて行った。私との交渉に使う材料のつもりだったらしいが、私には効果が薄くてな」
「なんでカダージュが」

ルーファウスは片眉を上げ、知らんというように静かに首を振った。
そして他に質問は無いのかとクラウドを横目に見ると、彼は眉間にシワを寄せながらシャロンを凝視していた。

「……迎えに来たんじゃないのか?」
「引き渡すのか」
「必要ならば」

これまたクラウドには意外だった。ルーファウスがただで彼女を引き渡すとは考えていなかったからだ。

「あんたはどうしてシャロンを保護していたんだ?」
「セフィロスコピーの残した足跡を辿った時、彼女について調べていた形跡が見つかってな。セフィロス復活を二度と起こさないために、シャロンについても知る必要があると考えた。しかし、彼女は一向に目覚めない」
「手に余っているってわけか」
「そういう言い方もできるな」

クラウドはポッドのガラスに手をやり、今にも目を開けそうな彼女から視線を外しルーファウスに向き直った。

「なら、連れていくぞ」
「その代わり、彼女が目覚めたら連絡をくれないか?」
「何のために」
「彼女は災厄の深い部分を知る貴重な証人の可能性が高い」

ルーファウスはあくまで調査の一環として、歴史を究明するための情報を集めているだけにすぎなかった。
目的はわからないが、クラウドには今のルーファウスがシャロンに害をなす可能性は低いように思えた。

「協力するかはこいつ次第だろ」
「そうだな、それでもかまわん。必要ならこれごとくれてやろうか?」

ルーファウスはポッドを手でなぞるが、クラウドはそれを断った。
ポッドが開けられると、重力に従ってシャロンの身体が倒れ込む。クラウドは彼女を腕に抱えるとルーファウスに目を合わせてから立ち去った。

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