第4章 Asrun dream
シャルアと別れ付近を捜索していると、瀕死のWRO隊員に出会う。
隊員は息も絶え絶えに、"朱いソルジャー"に部隊が壊滅させられた事、街外れのの倉庫に住人達が連れ去られた事を報告した。
ヴィンセントは言葉を妨げぬよう冷静に慎重にその報告を受け取る。
そして隊員はヴィンセントに引き継げた事に安堵したのか、役割を終えたように眠りについた。二度と醒めない眠りに。
また人が死んだ。
ヴィンセントは表情を崩さず、しかし静かに燃える怒りを感じていた。
ディープグランウドとやらは、本当に世界の人々を殺戮しようとしているらしい。
悔しさの滲む表情のまま息絶えた隊員の瞼を掌で閉じてやると、赤く燃え立つ炎のように広がるマントを翻し、彼は隊員の報告にあった場所へ急いだ。
こういった仕事は慣れていた。彼が元いた総務部調査課というのは、いわゆるなんでも屋のようなもので、探し物や謎解き、護衛、暗殺——
そんな仕事を秘密裏にこなす。
ソルジャーが表だとすれば、タークスは裏を担う戦闘員。
彼はそう、かつてはただの、一介のタークスだった。
住人が攫われた倉庫の敵を一掃し、救助は成功したと思えた時
朱い髪に朱い衣装、まさしくそこに居た女性は朱いソルジャーだった。
彼女は"朱のロッソ"と名乗った。
「あなたがヴィンセント・ヴァレンタイン? エンシェントマテリアを持つ男」
「エンシェント……マテリア?」
「ええ。持ってるのでしょう? オメガ制御の鍵。素直に差し出せば、苦しまないように殺してあげる」
ヴィンセントは、ロッソの理不尽な問いかけにディープグランウドの異質さを感じた。
そしてそもそも身に覚えのないエンシェントマテリアについて、何か情報を思い出そうと思考を巡らすが、やはり思い当たる節もない。
ロッソから何か聞き出せないかと考えるも、痺れを切らした彼女が先に口を開く。
「ふふ、交渉決裂?」
ロッソは不敵に笑み、瞬時にヴィンセントの背後へ回ると弓状の剣で斬りかかった。
ヴィンセントは避けるもロッソは間髪入れず弾丸を放ち追い討ちをかける。戦闘だけを繰り返してきたソルジャーは、動きの速さに加え少しばかり特殊な動きで彼を翻弄し、彼の体を足で突き飛ばした。
直後、ヴィンセントの身体が黒いオーラに包まれ、次に姿が見えた時にはカオスが発現していた。
その左胸には白い球が煌々と輝いている。
