• テキストサイズ

FFVII いばらの涙 綺麗譚

第4章 Asrun dream


 一件が終わり、世界は再び日常に戻った。
幸せとは呼べない状況でも、心強い英雄達がそばにいるから人は希望を見失わずに済んだ。

だが、歴戦の英雄の中にはまだ心の平穏を取り戻せていない者がいる。
彼はボーンビレッジの小屋を拠点にしながら世界を旅していた。あれから彼は泉に隠された女性像を見つける事が出来ず二の足を踏んでいた。泉の女性像が彼女であった確証もないのだが、十中八九そうだろうと、行方を探しているのだ。

およそ2年もの間行方知れずの番を探していると、世界が以前にも増して暗くなっていくように感じられた。
せめて世界の何処かに存在しているという確信が持てる材料があれば少しは違うのだが、彼女の情報は不自然な程何も残されていなかった。

ヴィンセントは思った。
かつての彼女もこんな気持ちだったのだろうか。再会までの10年以上もの時を、心の底まで諦めてしまえそうな年月を乗り越えて姿を見せてくれた。
諦めたくない。少なくとも情報が不完全なうちは決して。彼は空を見上げ月に誓った。

ふいに、2年ほど前から持ち始めた携帯電話に着信が入る。

「誰だ」
「リーブです。そろそろ登録してくださいませんか?」
「断る。この電話には、シャロンへ繋がる番号以外登録するつもりはない」

受話器から小さなため息が漏れ聞こえる。

「ヴィンセント・ヴァレンタイン。彼女に関する情報提供者の番号だとしても不要と答えますか?」
「……話を聞こう」


 リーブはヴィンセントをカームの街に呼び出した。
街はフェスティバルの最中で、屋内にいても喧騒が耳に届く程だった。
宿を取り、待ち合わせまでの時間をテレビを付けて紛らわす。今まで隠されていた神羅の地下施設の開かずの扉を開き、中継を行うというものだったが、突如としてその中継が途切れ、程なくしてこのカームの街を爆撃が襲った。

この戦はリーブの目論見であったわけではない。これは世界の現状なのだ。
そしてヴィンセントにとって最も重要な戦いの始まりだった。
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp