第3章 IN FLAMES
夜が訪れる。辺りに広がる静けさはその場にいる人の数には見合わない程で、不気味な雰囲気を漂わせていた。これはシャロンの結晶体が奪われてから数日後のことである。
カダージュ一味が街の子供を攫い、ボーンビレッジへ集めていた。
ヴィンセントは消えたシャロンの手掛かりを探るべく彼らを追い何度かアジトの様子を窺っていたが、この異様な光景は想定外だったので今は見守るしかなかった。
ここにいる子供達は皆、星痕症候群を患っていた。ここ数年で患者数が爆発的に増えた新しい病だ。戦時に漏れた化学物質によるものとも、心因性の病であるとも言われており、結局のところ治療法もなく、身寄りのない孤児たちは人々に避けられながら街の陰に隠れて生活するしかなかった。
おそらくカダージュ達が病を治してやるなどという文句で子供達を連れ出したのであろうことは予測ができる。
カダージュが子供達の前で演説を始めると泉の中へ入りその水を手で掬う。
すると子供達もそれに倣って一斉に泉へ入り水を掬い上げ口に含んでいった。
流れ込む力が子供達の瞳を青白く光らせる。妙な静けさの中空気のざわめきが聞こえカダージュがにやりと口角を上げると、泉のほとりで見守っていたヤズー、ロッズが何かを察知するように背後を振り返り銃弾を打った。
弾を弾く鋼の音。
クラウドがバイクの轟音と共にその場に着いた。
戦闘が始まる。
3対1
ではなかった。
子供達がクラウドの行手を阻む。
さすがにこの人数の子供達を傷付けずに戦うのは厳しい。クラウドは戦闘場所を誘導し、3対1の状態に持って行くが、多勢に無勢の状況は変わらない。
ヴィンセントは見かねたようにため息をつき、クラウドを救うべく斬撃の中へ飛び込んでいった。