第3章 IN FLAMES
ヴィンセントは慟哭した。
空っぽになった巨大樹の中で立ち竦む。切り裂かれた樹木と地面に散らばった無数の結晶からは、何者かが強引に彼女を奪い去ったのであろう事が伺える。
彼は踵を返すとすぐさま赤い影となって闇に姿を消した。
一方で、三人の男は、新しいアジトにシャロンの結晶体を運び終えた所だった。
「なぁ、これのどこが人間なんだよ」
「うるさいなぁ。わからないなら黙っててくれる?」
「……」
「泣くなよロッズ」
長髪の男が結晶体を撫でながら短髪の男ににやりと野次を送る。
「ヤズー、軽々しく触らないで」
カダージュが長髪の男を嗜める。
「お前のものでもないだろ」
「得体の知れないものに無闇に触るなって意味だよ」
「泣くなよヤズー」
ヤズーはさして興味なさそうに無表情のまま顔を背けてその場を離れた。
ロッズはカダージュが結晶体に夢中になっている事が気に食わず、腕を組み苛々した様子で指を上下させた。
「しっかしまぁ、こんなもんがあると目障りなのは確かだろ」
「人間が結晶化してるなんて訳ありに違いないよ。いつかどこかで使えるかも」
「んじゃその時が来るまでこの泉の中にでも沈めて隠しておけばいいんじゃねぇか?」
「そうだね……この子が何かの鍵になっているなら、誰かが探しに来るかもしれないし」
かくしてシャロンはボーンビレッジの泉の底に沈められる事となった。