第2章 NINE SPIRAL
「ぼっちゃん……フフ……キャハハハ! ぼっちゃん、おイタはいけませんよ?」
「スカーレット。なんのことだ?」
「ナンバー03はどうしたの?」
「俺が処断した」
「ふぅん……」
崖の下を見下ろし、スカレットはにやりと笑った。
「あの子は普通じゃないわ。今に這い上がってくるんじゃないの? 小屋の中で逃亡計画でも話し合っていたんでしょう」
「白々しいな。聞いていたんだろう?」
「そうね。あんたはこのまま神羅に残るつもりらしいけど、また彼女、攫いに来るんじゃない?」
そこまでして俺に執着する理由がない。
そもそもあの女はなんの因縁があって俺を攫いに来た?
「その時は俺が直接手を下す」
「ちょっと、捕らえるだけにしてくれる? あの子はいい兵器になるのよ」
「俺の報酬を俺がどうしようと勝手だろう」
「……まぁいいわ」
スカーレットが顎で車を示す。
一先ず本社に帰るということだろう。
背に神経を集中させ、あの女が生きていることを願った。
本音を言えば、あのまま共に飛ぶことも頭の片隅では考えていた。
ただ、外に張られた兵は、俺の想定していたものよりも遥かに数多く、俺はあの女を安全に逃がすためにこの場に残る道を選んだ。
案の定、向こうが警戒しているのは俺のほうらしく、俺が残ったことで半数以上の兵がこちら側にいる。
今の俺はまだ女一人逃がすだけで手一杯だ。
そのことに不甲斐なさを感じたが、当の目的であったシャロンを逃がすということには成功した。
それだけで今は良しとするか……。
捕まるなよ。
そう心の中で思いながら俺は神羅の車に乗り込んだ。