• テキストサイズ

FFVII いばらの涙 綺麗譚

第2章 NINE SPIRAL


「バカねぇ……」
「?」

本当にバカだった。
俺は助手席に座るスカーレットの呟きに耳を貸してしまった。

「崖の下は魔獣の巣窟」
「なに?」
「あの子、死んでるかも。キャハハ! 生きていたとしても、もうあなたに捨てられたショックで立ち直れないんじゃない?」

俺はまだ甘かった。
この女が目をつけたものを簡単に手放すはずがない。
神羅を甘く見すぎていた。

「お前には渡さない」
「けど、捨てたでしょう?」
「処断だ。生きながらえていたのなら、処断が済むまでは俺の所有物であることに変わりはない」
「お子様の理論ね。そんな理屈、大人の世界じゃ通用しないのよ」

くずが。
俺はこの女を心底嫌いになった。

 本社に着き、俺は運ばれた荷物の中にひとつ不自然な大きさのものがあることに気づいた。本当に情けない。
この体がもっと成長していれば、力づくで奪いに行くのに。

 俺はその場は堪え、後日宝条に掛け合った。

「いいのか?」
「ああ。英雄は一人でいい」

要求はこうだ。
シャロンの記憶を消し、森の多い北の大地へ逃がすこと。
権力を二分化する因子は芽吹く前に排除すべきだと説いた。
宝条は満足そうに俺に問う。

「お前はあの女が好きかね?」
「嫌いじゃないが……」

俺はその返答であっているのかよくわからなかった。なにせ突然だったからな。
しかし宝条はなぜか納得し、俺の案に乗った。

 数日後、どこから奪い去ってきたのか、宝条がシャロンを運んで研究棟へやってくる。
やはり捕らえられていたか。

弱いくせに、何故でてくる?
なぜすぐに人を信じる?

運ばれていくシャロンと目が合う。
彼女は俺の顔を見て安堵したように笑った。

「何も知らなかった頃に戻れ……シャロン。その呑気な顔で、何も知らずに暮らせばいい」
「セフィロス? どういう意味?」

質問に答える間も無く、俺たちの間には一枚の壁が隔てられた。

 次に彼女の姿を見た時、彼女はまだ記憶が定まっていないのか、目に映る全てに対して首を傾げながら記憶を整理していた。

「ナンバー、03」
「ん……?」

彼女は俺に視線を送り、愛想笑いをした。
わかっていたことなのに、何故か胸が少し痛むのを感じた。

「お前はここにいてはだめだ。もう神羅に近付くなよ」

それからあの夜まで、彼女と会うことはなかった——
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp