第2章 NINE SPIRAL
魔晄炉の調査にはシャロンも同行させた。
こちらとしては、強姦魔の手から女を守る目的があったが、向こうからすれば、彼女は人質と同じだった。
魔晄炉の調査は二日で終了した。
彼女の待つ小屋へ行く。
扉を開けてすぐ、椅子に腰掛ける彼女の姿が視界に映ったので、後ろ手に縛られたロープを外してやる。
「セフィロス……おつかれさま」
「……なんだ、何故そんなにしおらしくなっている?」
「うん……これで私、セフィロスの女になっちゃったわ」
「なにを言う……」
「ふふふ、ごめん、青少年をからかうものじゃないわね」
少し頰に熱を感じる。
俺はそっぽを向いて解いたロープを床に落とした。
「……で、これからどうする?」
「私と逃げよう」
「俺は行かない」
シャロンの顔から笑顔が消える。
なぜそんなに悲しそうな顔をする?
「セフィロス、無理にここにいる必要はないのよ?」
「無理などしていない。ここは俺の居場所だ」
「ね、私と来て……」
上半身を乗り出して潤んだ瞳で見つめてくる。
懇願する様は悪くないが……
「……色仕掛けをしても無駄だ」
「いっ、色仕掛け!?」
……その仕草が天然だと?
獰猛な男達から狙われるわけがわかる。
「はぁ……なんだかよくわからない女だな。とにかく、お前は今回の件の報酬として、俺の玩具となってもらう」
「玩具?」
「丁度いい。遊び相手が欲しかったところだ」
見るからにほっと胸をなでおろす。
バカな女だ。その場しのぎの言葉をすぐに信じたりして。
この女は俺の狙いなど知る由もないだろう。
部屋の隅に隠された監視カメラを横目で見る。
「さ、応援が来る前に、行くぞ……」
「やだ……え……やだ……神羅にはいたくない」
「大丈夫だ。俺が守ってやる。お前に危害を加える奴は俺が切り刻む」
渋々腰を上げるが、足取りの重いシャロンに少し苛立ちを覚える。
「おい……自分の立場がわかっていないようだな。早くしろ!」
「あっ」
手を引き小屋の入り口から駆け足で外に出ると、シャロンの手を引き側にある少し急な崖から放り投げ、底にエアロの魔法をかける。
大丈夫なはず……急に見えるが、下の方は緩やかだ。
崖から風が吹き上げてくるのを感じ取ったあと、俺は自分の頭に銃を突きつけている人物を振り返った。