第2章 NINE SPIRAL
涙を浮かべて俺を見上げるシャロン。
汗で艶めく乳房と薄く色づいた先端を露出させたまま肩で息をする姿は俺に初めての感覚を植え付ける。
とても罪深い感情と羞恥心に襲われたが、その体から目が離せなかった。
しかし、彼女の怯えた表情に気づき我に返る。
深呼吸して気持ちを落ち着かせてから彼女に手を差し伸べた。
「……なんて格好してる。ほら、立て」
「……ありがとう……セフィロス」
乱れた衣服を直しながら俺の手を握ってくる。
俺は目を逸らすしかできなかった。
この女はここに居てはいけない。頭が混乱する。
「……このまま外へ逃げろ……」
「セフィロス……外へ行く時はあなたも一緒よ」
俺は迷っていた。
得体の知れない女を信じるのか、これまで育ったこの環境を信じるのか。
これ程の目に合って尚俺に執着する理由はなんだ?
漠然と考えながら歩き始めた時、宝条とその部下、そして兵士たちによって取り囲まれた。
身内に銃を向けられる屈辱。
「おお! お前が害虫を駆除したのか! だが、いかんではないか……この女は、これからミッドガル地下へ送るのだからな!」
「ミッドガル地下?」
兵士たちの奥から高い靴音が聞こえる。
「そうよ」
「スカーレットか」
派手な赤い衣装にきつい香水の匂い。この女は駄目だ、好きになれない。
「ナンバー03には強化兵としての素質があるわ。ソルジャーとしてのね」
「この女が……ソルジャー?」
目を疑った。こんな弱々しい女がソルジャーだと?
「ちょっと、さっきから何? 私を地下にって……一体何があるの?」
「お前が知る必要はない」
「キャハハ! まぁこれからそこに入るんだから、いいんじゃないの? 教えてあげても」
「ディープグラウンド」
ディープグラウンド?
大人たちの会話を黙って聞いていると、どんどん新たな固有名詞が飛び出してくる。
「ヴィンセントはそこにいるの?」
「はぁ?」
「生きているのでしょう? 彼はどこにいるの?」
「知るか。お前が消えてから、あの女が実験に使っていたがなぁ……そこら辺の土でも掘って行けば会えるんじゃないのかね? クックック……」
「キャハハ! 悪趣味ね!」
シャロンの目つきが鋭くなる。
「彼のことは、ルクレツィアが救ってくれると言っていたわ……。実験……嘘……ありえない」
握られていた手に力がこもる。
